プロジェクト・ストーリー
Project Story
都市ガスの安定供給を支える要、それが「ガバナ(整圧器)」です。この特殊な設備の操作スキルをいかに継承し、精度を高めるか。北海道ガスが導き出した答えは、VR(仮想現実)を活用した操作訓練でした。
「VR空間で3Dモデルのガバナを操作する」という、業界でも前例のないこのプロジェクト。熟練者が持つ「現場の技」をデジタルで解き明かすことで、日頃馴染みの薄い設備をいかに身近なものへと変貌させたのか。
本プロジェクトを推進された北海道ガス(株)の方々に、導入の背景と未来への展望についてお話を伺いました。
人材開発センター 研修グループ村上様
人材開発センター 研修グループ丹野様
供給保安部 供給防災センター板垣様
供給保安部 供給防災センター堀川様
供給保安部 供給防災センター木屋様
──── まず、ガバナの操作訓練について教えてください
まずガバナとは、市中に網の目のように張り巡らされたガス管を通じて、工場から送られてくる高圧のガスを家庭用に適した低圧へと整える役割を担う設備です。
安全を確保するために、研修施設には市中と同じガバナの設備を設置し、受講者は熟練者の指導の下、操作訓練を含めた研修を受けています。
──── なぜ訓練にデジタル技術を応用しようと思ったのでしょうか
ガバナ操作は手順が複雑で難易度が高いため、これまでは熟練者の指導の下、研修施設でを集中的に訓練を行う必要がありました。その訓練を、「いつでも、どこでも、一人で」行うことができるようにデジタルコンテンツ化できないか、というアイデアが生まれたのが始まりです。デジタル化によって、これまでの場所や時間の制約を緩和できるのではないかと考えました。
──── デジタル化への設計過程で大変だったことは
ある程度ガバナ操作の習熟度がないとシナリオ作成は困難?
そうです。というのも、基となるガバナ操作手順は、一つひとつの手順に意味があり専門的な上、専門用語も多いためです。そこで私達は、操作のポイントなどを解説した動画を作成しました。その動画を制作会社の株式会社KOO様にお渡ししてシナリオ化を進めたのですが、KOO様には、専門的な内容を誰もが理解しやすい表現へと見事に落とし込んでいただきました。
制作期間中も定期的に打ち合わせを行い、コンテンツのサンプルや先行開発部分を確認しながら、現場の声を確実に取り入れるようにしました。 実際に熟練者が行えば、意識せずにパパっと終わってしまうような作業の中にこそ、大事な要素が隠れている場合もあります。また、繊細な動きと確認が必須となる作業もあります。それらを実際のシミュレーション上でどこまで忠実に再現させるかというすり合わせは、妥協なく行いました。
──── 3Dモデルになったガバナはいかがでしたか
実際のガバナの撮影時には、「どういうものになるのかな」、「どこまで本物っぽく見えるのだろうか」と想像がつかなかったのですが、実際に完成した3Dモデルを見た時はそのリアルさに驚きました。体験していただくと分かるのですが、ガス管やバルブの質感まで、本物のガバナが目の前にあるかのようなリアリティがあります。
──── そのリアルなガバナを、VRゴーグルで体験できるのがポイント
VRは、圧倒的な没入感があり、動画と比べて新しい技術ならではのメリットをより活かせるという強みがあります。大きさや質感など、動画ではどうしても伝えきれない実物さながらの情報量を臨場感をもって体感できるのが魅力です。
──── 3D空間で、CGのガバナを操作する上での工夫はありましたか
単純に、「このバルブを開けて、次はこの計器を見て…」とクリアしていくだけでは、訓I練体験として説明が足りない部分がありました。また、KOO様の制作スタッフの皆様にとっては、初めて知る手順内容でしたので、客観的な視点から熟練者の暗黙知や、操作がわかりにくい箇所に気づいてもらえるというメリットもありました。
要所要所で動画がポップアップし、どういう作業なのかをズームで見せたり、圧力の変化を音やCGで演出したりなど、さまざまな工夫によって情報を補完できるのもデジタルコンテンツならではの利点だったと思います。
──── クイズが登場するシーンもありましたね
はい、動画や演出などの工夫に加えて、メリハリをつけるために、操作にかかわるクイズを要所要所に設置しました。単調に操作作業を進めて行くだけでは、「一体今、何のために何をしているのか」とういう意識が薄れてしまします。そのため、「もしこの時に違うバルブを閉めてしまったらどうなるか?」 などを体験できるクイズにし、より記憶に残りやすい訓練を目指しました。
──── できあがったVRコンテンツの感想はいかがでしたか
テスト段階でも定期的に触ってはいたのですが、実際に納品されたコンテンツは、ブラッシュアップを経て情報量もプレイ体験も満足いくものでした。制作中に協力してくれていた、ガバナ操作の担当者も、かなり興奮しながらプレイしていました。
リアルな体験ができる点や、音と映像による豊かな情報、そしてゲームのような楽しさもある操作性から、学ぶ側も退屈な義務感を持たず、ポジティブに進められる教育コンテンツが出来上がったと思います。
──── 活用方法も色々ありそうですね
実際の訓練前に、VRゴーグルで事前体験をしてもらうだけでなく、実機による訓練の後の復習に活用するのも、記憶の定着に役立つのではないかと考えています。今回は、あえてヒントを少なくした「ハードモ ード」も搭載されているので、手順に慣れて来たらハードモードに挑戦するという楽しみもあります。
今回は新しい試みとしてガバナのVRコンテンツを制作しましたが、発注側である私たちにとっても大きな経験となりました。ここで得た知見は、他の機材のデジタル化による訓練/教育コンテンツ開発や教育手法など、さまざまな形で活きるのではないかと考えています。
北海道ガス様の新たな挑戦である「社内教育用VRコンテンツ制作」の舞台裏をお聞きしました。
本プロジェクトは、デジタル技術の活用によって教育・訓練の質を向上させた、まさにDX(デジタルトランスフォーメーション)の好事例と言えます。
株式会社KOOでは当事例のように、企画段階から密な協力体制を築き、お客様の目的達成に向けた最適なコンテンツ制作をトータルでサポートいたします。